ここ数年、医療用医薬品の出荷調整による供給不足が相次いでいて調剤薬局としては非常に困っているのですが、薬が入らないことに対して疑義照会をして処方を変えてもらう事例が沢山出てきています。
そこで少し大変なのが、『代替薬に何が存在するのか選択肢をドクターに伝えること』なんですよね。
連絡をする前に代替薬に何があるか確認するんですが、セフェム系って世代が分かれていてどの世代かで適応菌種が違ってくるので、『第◯世代のセフェム系ってある?』と聞かれたりして困ったことが何度かあります。
薬剤師の皆さんは思ったこと無いでしょうか?
そこで今回はセフェム系の分類やどの菌種に強いのかなどをまとめてみようと思います。
ちなみに抗菌薬には内服薬と注射剤がありますが、今回は基本的に薬局で取り扱っている内服薬の方をメインに紹介していきます。
セフェム系抗菌薬とは
特徴
セフェム系抗菌薬は、β-ラクタム系と呼ばれる『β-ラクタム環』を中心に持つ抗菌薬であり、端的に言うと細菌の細胞壁合成を阻害することで菌を殺す作用を持っています。
細菌には『細胞壁』と呼ばれる“防御壁”が存在し、これが無いと細菌は生きることが出来ません。
そしてこの細胞壁を作るのがペニシリン結合タンパク質(PBP)と呼ばれるタンパク質であり、この作用を阻害することで細胞壁を作ることが出来なくなり細菌は死滅します。
比較的妊婦にも投与しやすい抗菌薬です。
セフェム系抗菌薬には、開発された時期によって世代に分けられており、第一から第四世代まで存在します。
正確にはセファロスポリン系、セファマイシン系、オキサセフェム系と3つの種類に分かれていて、更にセファロスポリン系のみ世代が分かれているという形になります。
セファマイシン系は第二世代セファロスポリン系、オキサセフェム系は第三世代セフェムと言われていたこともあるようです。
各世代、各薬剤によって得意とする菌種が異なっているので、単純に代替することは難しいのが特徴ですね。
セフェム系は基本的に『グラム陽性菌』をターゲットとする抗菌薬で、そこから徐々に『グラム陰性菌』への活性へと変化していきますが、『腸球菌』『MRSA』『緑膿菌』『嫌気性菌』には効力を発揮することが出来ません。
耐性
β-ラクタム系抗菌薬には、『β-ラクタマーゼ』と呼ばれる天敵がいます。
このβ-ラクタマーゼはβ-ラクタム系抗菌薬の核であるβ-ラクタム環を“開裂させる”ことで不活化、つまり薬の効力を無くす作用を持つ酵素です。
このβ-ラクタマーゼは細菌が産生することができ、所謂『耐性を持つ』という状況になります。
そして、この酵素の活性を阻害する薬剤も存在し、それと一緒に内服することで効力を失いにくくする事ができます。
細菌にも抵抗する意思があり、なんとかして生き残ろうとするわけですね。
基本的にβ-ラクタマーゼはペニシリン系、第二世代までのセファロスポリン系を不活化させるのですが、時に『ESBL』と呼ばれる強力なβ-ラクタマーゼを産生する様になることがあります。
このESBLは全てのセファロスポリン系を不活化させる非常に厄介な酵素です。
ESBLが検出されると、これに有効な抗菌薬を選択しなければならないため、対応が遅れると感染が広がってしまいとても対処が大変になります。
世代別特徴と代表的な薬剤
第一世代セファロスポリン系
主に『グラム陽性菌』をメインターゲットとし、MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)やレンサ球菌などの感染症に使用されます。
内服薬は、主に外来での皮膚軟部組織感染症(蜂窩織炎等)に使用されます。
注射剤のセファゾリンはブドウ球菌感染症の多くで第一選択とされていますが、呼吸器感染症の原因菌には効果を発揮しにくいとされています。
主な薬剤
内服:ケフレックス(セファレキシン)
注射:セファゾリン
第二世代セファロスポリン系
第一世代と比較して、β-ラクタマーゼに対する安定性や『グラム陰性菌』に対する抗菌活性が増強し、代わりにグラム陽性菌に対する活性は若干劣ります。
特別有効な菌種は存在せず、第一世代セファロスポリン系抗菌薬を温存するために先に使用するという選択肢があるようです。
緑膿菌には無効です。
主な薬剤
内服:ケフラール(セファクロル)、オラセフ(セフロキシム)、パンスポリン(セフォチアム)
注射:フルマリン(フロモキセフ)、メイセリン(セフミノクス)
第三世代セファロスポリン系
上記二世代と比較して、更にβ-ラクタマーゼに対する安定性や『グラム陰性菌』に対する抗菌活性が高くなっており、グラム陽性菌に対する活性はより劣っています。緑膿菌に対して効力を発揮する薬剤が存在しています。
第三世代以降のセファロスポリンはβ-ラクタマーゼには負けない強さを持っているので、ESBL産生菌が相手でない限りは不活化されることはありません。
第三世代セファロスポリン系抗菌薬は髄液移行性を持っているので、『細菌性髄膜炎』の初期治療や肺炎球菌性肺炎、市中肺炎に使用できます。
経口第三世代セファロスポリン系はバイオアベイラビリティが10~30%程度と低いため、臨床現場ではあまり使用を推奨されていないようです。
逆に注射用第三世代セファロスポリン系は1回用量が多いため、有効とされています。
肝代謝型のロセフィンが主に使用されますが、胆道系に障害がある場合は腎排泄型のセフォタックスが選択されることもあります。
注射剤のセフタジジム、セフォペラゾンには緑膿菌活性がありますが、代わりにグラム陽性菌には無効になっているという特徴があります。
緑膿菌活性のないセフトリアキソンはMSSAに感受性を示しますが、MSSAには第一世代のセファゾリンの方が強いので基本的にはあまり使われません。しかし、髄液移行性はセフトリアキソンの方が高いので、MSSAによる“髄膜炎”にはこちらが使われます。
セファロスポリン系はほとんどが嫌気性菌に無効ですが、セフォセフはスルバクタムというβ-ラクタマーゼ阻害剤を配合しているため不活化されにくく、更にスルバクタム自身が嫌気性菌に直接ダメージを与えるので、有効とされています。
セフォセフは胆道移行性が良いため胆道感染症に使用されます。
主な薬剤
内服:フロモックス(セフカペン)、セフジトレン(メイアクト)、セフジニル(セフゾン)、セフポドキシム(バナン)
注射(緑膿菌活性なし):ロセフィン(セフトリアキソン)、セフォタックス/クラフォラン(セフォタキシム)
注射(緑膿菌活性あり):モダシン(セフタジジム)、セフォセフ/ワイスタール(セフォペラゾン・スルバクタム)
第四世代セファロスポリン系
第三世代と比較して、グラム陽性菌への抗菌活性が改善されており、緑膿菌にも有効となる広域抗菌薬です。
言うなれば、第一世代+セフタジジムといったところでしょうか。
第一世代のグラム陽性菌への強い抗菌活性に加え、第三世代のグラム陰性菌への強い抗菌活性とセフタジジムの様な緑膿菌活性がプラスされています。
発熱性好中球減少症(FN)などに対してエンピリックに開始することが多い便利な抗菌薬となっていますが、菌の培養結果に応じて狭域に変更していく必要があります。
主な薬剤
注射:マキシピーム(セフェピム)
セファマイシン系
β-ラクタム系抗菌薬であり、セファロスポリン系と似たような構造をしているためセファロスポリン系に分類されていたこともあります。
抗菌スペクトラムの近さによって、セフメタゾールやセフォキシチンは第二世代、セフォテタンは第三世代とされています。
セファマイシン系が特徴的なのは、セファロスポリン系が苦手としていた『嫌気性菌』と『ESBL産生菌』に有効である点です。
横隔膜下の嫌気性菌に有効であるため、腹部手術の術前投与や腹部/骨盤内感染症に使われています。
他にも胆道感染症やESBL産生菌による尿路感染症などにも使用されます。
主な薬剤
注射:セフメタゾン(セフメタゾール)
オキサセフェム系
セファロスポリン系とは骨格が少し異なっており、安定性が向上した合成のβ-ラクタム系抗菌薬です。
合成された抗菌薬なので、自然界には存在しません。
セファマイシン系同様、『嫌気性菌』や『ESBL産生菌』に有効なので、幅広い抗菌活性を持っており、強力なカルバペネム系抗菌薬の代替薬として重要な役割を持っています。
緑膿菌には無効です。
抗菌スペクトラムから、フロモキセフは第二世代セファロスポリン系、ラタモキセフは第三世代セファロスポリン系とされています。
主な薬剤
注射:フルマリン(フロモキセフ)、シオマリン(ラタモキセフ)
未分類
セフトロザン・タゾバクタムは2019年6月に発売された未分類のセファロスポリン系であり、耐性緑膿菌に対してカルバペネム系抗菌薬を温存するための選択肢として重要な役割を持ちます。
セフタジジムの構造と類似しているため緑膿菌には有効であり、β-ラクタマーゼ阻害剤であるタゾバクタムを配合しているのでESBL産生菌にも有効ですが、嫌気性菌に対しては一部に抗菌活性を確認できなかったものもあったため、嫌気性菌においてはこれ単独で使用することは出来ないようです。
主な薬剤
注射:ザバクサ(セフトロザン・タゾバクタム)
まとめ
如何でしたでしょうか?
セフェム系と一口に言っても多くの種類に分かれており、それぞれ得意、不得意なタイプがあるため慎重に選択する必要があります。
代替薬を提案する際にも、これらの特徴をしっかり抑えた上で、何を提案できるのか考えてから連絡した方が良いかもしれませんね。
ではでは!

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